最近、お仕事話を書くにあたって、彼らの仕事振り
けっこう分析好きの私。実のところは小説がはかどらないので気分転換だったりするんですが
パースリは他のシリーズに比べて泥棒話が多い気がしていましたし、成功率も高いという印象があったのです。さて結果は?
――その前に。ルパンたちの「成功」ってなんでしょうか?
狙った獲物を手に入れて万々歳、 これは文句なしに成功でしょう。が、そう簡単に語れない結末の多いこと!
盗みには成功したものの承知で人に譲ったり、あるいは不本意ながら手放したり横取りされたりというパターンも少なくありません。獲得したかと思うと取り返されて、ひとつの獲物に何度もチャレンジすることもあります。
というわけで、表(別窓)に示す記述になりました。
ちょっとややこしいかと思います。この結果を整理してみましょう。
ちなみにパースリの話数は49とし(前後編は1話とする)、挙げた獲物の総数は59です。
1)獲物の種類
分類別の表と割合を下表に示します。
数(メイン) | 割合(%) | 登場回(カッコ内はメインでないもの) | ||
メイン/話数 | 数/獲物総数 | |||
金塊・金細工 | 14(14) | 29 | 24 | 1,2,4,5,8,16,17,21,26,30,35,37,39,50 |
現金・財産 | 13(9) | 18 | 22 | (14),18,(22),23,34,40,41,42,43,(44),45,47,(49) |
宝石類 | 11(9) | 16 | 19 | (2),10,11,13,20,22,25,33,(38),44,49 |
絵画・芸術品 | 8(5) | 10 | 14 | 3,12,(12),(20),24,31,(31),36 |
財宝 | 2(2) | 4 | 3 | 6,15 |
その他 | 11(8) | 16 | 19 | 9,(9),19,(21),27,29,32,38,46,48,50,(50) |
すでに指摘されていることですが、パースリの特徴は「金塊・金細工」が多いことです。
黄金卿も含めると、実に14! 特に前半において金の比率が高いようです。
次いで多いのが「現金・財産」の類。なんと13もあります。ただしメインのお宝というより副産物
保険金がよく登場するのもパースリの特徴です。騙し合いの要素が強いからかと思いますが、世相も反映しているのでしょう。身代金もあったりします。
そして「宝石類」、「絵画・芸術品」。新シリーズで多い印象のあるこれらのお宝ですが、パースリではそれぞれ1割~2割といったところです。
さて、 ここまできてお気づきでしょう。「財宝」が少ないことに!
これも新シリーズでしばしば見た気がしますが、それより何より、テレスペの印象が強いお宝です(笑)。財宝となると泥棒話というより冒険談な感じがします。存在するかどうかもわからないお宝ということで、非確実性が強いとも言えるでしょう。
裏返せば、パースリのお宝は現実的ということですね。半数以上が金か現金の類なんですから
そういえば話自体も荒唐無稽なものが少ない(手段としては別)気がします。
2)予告
パースリでは犯行予告が少ないのも特徴のようです。予告状の形が出てきたのはただ一度きり!(25話)というのだから驚きでした。
10話では本意ではないものの、盗むと公表されたので一応予告有としました。 また、36話の冒頭で銭形から予告を匂わせる発言があり、43話では不二子が直接犯行予告をしています。
以上を合わせてもたったの4回。なんだか意外ですねぇ~
その分、銭形は「この獲物はルパンが狙うに違いない!」との読みで動いているわけで、その冴えっぷり
3)盗みのきっかけ
最初からルパン達が狙いをつけている以外に、不二子からの話が多いことは予測していましたが・・・。不二子が持ち込んだ(と思われる)獲物は12でした。これを多いとみるか少ないと感じるか?
ただ、私の印象に残ったのは不二子のビジネスライクな雰囲気です。
モチロンお色気も存分に利用してはいるけど、「ねぇルパァン、お願いがあるの・・・」というよりは、「あたしと組まない?」が多いような。とはいえ一方的に巻き込んで利用することが最多でしょうけど
他には過去の因縁や、誰かの陰謀、依頼を受けるケース。この3つは入り組んでることもあって一概に分類しにくいですが、合わせて13ありました。パースリでは陰謀・騙し合いが多いので、そういった要素にも関わってくる部分だと思います。(このあたりは後述)
4)結果 (5/29:獲物の種類に関する記述を追加)
さて、ようやく本題に入りましょう
数(メイン) | 割合(%) | 回(カッコ内はメインでないもの) | ||
メイン/話数 | 数/獲物総数 | |||
獲得 | 28(22) | 45 | 47 | 1,(2),4,5,8,10,(12?),(14),16,18,19,20,(21),29,30, (31).31,32,33,34,37,40,41,42,44,(44),45,47 |
譲渡 | 10(9) | 18 | 19 | 2,3,6,11,(20),25,26,36,39,43 |
放棄・廃棄 | 5(4) | 8 | 8 | 9,(22),27,48,50 |
横取り | 4(3) | 6 | 7 | 12,17,38,(38) |
焼失 | 2(2) | 2 | 3 | 22,49 |
失敗 | 10(8) | 16 | 17 | (9),13,15,21,23,24,35,46,(49),50 |
色分けは、「金塊・金細工」 「現金・財産」 「宝石類」 「絵画・芸術品」 「財宝」 「その他」
「譲渡」・「放棄」・「廃棄」・「横取り」・「焼失」は、盗みには成功したもののそれらの理由で失った場合です。
やはり獲得した割合が高く、ほぼ半数です。「譲渡」・「放棄」・「廃棄」までは承知の上として「成功」に含めれば、なんと7割以上の成功率!流石はルパン!
盗みの手段もいずれまとめたいところですが、評価したいのは金庫を斬鉄剣で安易に開けたケースがないことです。10話はかなり五右衛門が苦労してたので例外として(^^)。(旧シリーズも最終話だけなんですけどね)
予想外だったのは、不二子ちゃんの「横取り」が少ないこと。話の過程においてはそれなりに多いのですが、結果としては3回。まぁ11話などは横取り(強奪/笑)と言えなくもないのですが
試みたものの失敗していたり(2,19,29,32,38,45,46話)、そうと見せかけて敵を欺いたり(19,30話)・・・そういえばそもそも登場していない回もありましたっけ。(10,39,48,49話だったかな?)
「焼失」は、手に入れる前にそうなったケースもありますね(23,46,49話)。内2回がダイヤで2回が現金ですが・・・合わせて5回の焼失は多いというべきなのか?(笑)
獲物別の結果(上表の色分け)も見てみたいと思います。
「獲得」 に注目すると、前半に金、中盤がその他、40話以降に現金の類が多いのがはっきりわかりますね。率でいえば現金・財産が最も高く、7割(成功率は85%!)です。次いで金が5割(71%)、宝石が4.5割(64%)、絵画が4割(75%)、その他3.6割(72%)、財宝0(50%)となっています。
あと特徴的なのは「放棄・廃棄」のほとんどがその他であること。これは成功率と獲得率のギャップに現れています。処分が目的だった9話と逃げるために手放した22話以外は始めから得体の知れない獲物だったため、手にしたものの正体がルパンの趣味ではなかったということですね。
「譲渡」と「失敗」に関しては、数としてはほぼまんべんなくといったところ。総数の少ない宝石や絵画は、譲渡の数が成功率と獲得率の差となっています。
結果としてちょっと興味深いのは、20話台の「獲得」が少ないこと。この辺り面白く感じられる話が多いだけに、とても意外でした。
最近の話が面白くない理由のひとつは獲物を獲得しないせいかと思っていたのですが・・・やはりそういう問題ではないようですね
5)騙し合い
これはパースリの最大の特徴ではないかと、個人的に思っています。
どこか得体の知れない雰囲気の中で荒削りな魅力が光る旧シリーズ、なんでもアリの追っかけっこで障害物競走のような面白さがある新シリーズと比べ、より現実的な利害の絡み合った駆け引きが展開されるパースリ。
「逆転逆転また逆転」「コンゲームに乾杯」なんて大げさなタイトルがありますが
上記の別表の中でタイトルの横にある※印の項目、これは騙し合いの要素を示しています。
☆は誰かの陰謀などに利用されているケース(不二子相手を除く)、★は特に騙し合いの色が強い話(一転二転は当り前なので三転以上と感じたものが対象。☆の中には★を含むものもあります)。
これが合わせて27話、あと3つ程★をつけようか迷っていますが、いずれにせよ全体の半数以上を占めています。
騙し合い・出し抜き合いの争奪戦の結果、最終的にはルパンが勝つ。
「濃く」て「大人」なストーリーが多いといわれるパースリ、それを展開・構成面で支える要素のひとつでしょう。
最後に、ここまで読んでくださった方にお願いをひとつ。
こうして分析を試みてはみたものの、判断しかねている箇所もあれば見落とし・勘違いもあります。自分では気づかない視点もあるはずです。
貴方のお考えやお気づきの点がありましたら、どうか私に教えてやってくださいませ。
今後、新旧シリーズやお宝以外の観点からもあれこれ分析してみたいと目論んでいます
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