ルパン対新選組

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2月は「30日」がないため、次回の酒データ更新は3月10日です。
勿体つけてすみません。データ自体は既にほぼまとめてあるものの考察記事が...あれで結構アタマを捻るもんですから、オーバーヒートする前に小休止をば。

ところで「新選組!」の再放送もついに池田屋事件まで来ましたね。三谷さん曰く「"最大の事件"ではなく、"最大の通過点"」の池田屋ですが、いよいよ対外的にも後戻りできない道を突き進む彼らが、誇らしくも哀しいです。。。
さて。
ルパンにも新選組が登場していましたね。新ル71話「ルパン対新選組」がそれです。

まずは前置きを少々。
ルパン作品には実に様々な"元ネタ"がありますよね。知る人ぞ知るといったコアな題材にヒントを得たものから、誰でもわかる時事ネタを前面に押し出したものまでピンキリです。中で日本の歴史ネタといえば、新選組と忠臣蔵が双璧でしょう。
私の感想では、どちらも大変残念な作品と言うしかありません...。
この2作、同じ脚本家なんですね。しかしこの方が日本史好きかというと、そうは思えないんです。確かに歴史を踏まえた部分もあるとはいえ、ただ名前を借りてるだけで全く"パロディ"になってませんから。尚悪いことに、元ネタのファンが楽しめるようにも作られていない。この話が好きだという新選組ファンは居ないんじゃないかなあ。
そんなわけで、以下辛口です。甘党の方はご用心を...(^^;

  ◇◇◇

本作、新選組といっても登場人物は三代目の近藤勇と沖田総司のみ。
実際にはどちらも直系の子孫は居ないが、それはルパン世界のことなので気にしない。そして近藤が実業家であるのも別に構わない。
問題にしたいのはキャラクター造形だ。
いかにも怪しげな俗物といった近藤は、当時(というか大河以前)の評を考えれば致し方ないとも言えるけど...。先祖と違う道を選ぼうとするのはいいとして、どうにも薄っぺらい悪党になっていて哀しい。一方、沖田の暴走ぶりにもついていけない。近藤との対立も唐突すぎる。何のバックボーンもない敵キャラならまぁどうでもいいところだが、新選組でこんなどんでん返しは勘弁願いたい。ましてや二人が殺し合うなど、後味が悪いことこの上ない。

しかし、どうにも不思議なのだ。
なぜ、土方を登場させなかったのだろう。
話の中で五稜郭にも触れているし、北海道独立国の件は明らかに彼が属した旧幕府軍を意識しているのに。そりゃこの展開では登場のしようもないけどさ...。
だが土方がいれば新選組側のバランスが取れ、ルパンたちとの駆け引きも深みが増すのではないか。近藤を底抜けに人が好い理想家のリーダーにし、陰謀面は一手に土方が請け負い、腕は立つが血気に逸る若者が沖田――というトリオにしてしまったら。
これならルパンたちといい勝負にならないだろうか。お人好し相手ではルパンも多少調子が狂いそうだし、心酔する男を補佐する相棒同士の牽制や、剣豪対決も互いの武士道の相違と理解が描けたら尚面白い。むろん不二子は近藤とルパンを二股にかけた上で、改めてルパンの天才ぶりに惚れ直してくれたらいいと思うのだが。

更にいただけないのが、近藤がジョンとかいう殺し屋と手を組んでいること。
新選組が他から殺し屋雇ってどうするよ...(泣)
しかもそれが"異人"とは。名前や見た目からしてかつて黒船で幕府を脅したメリケン(アメリカ)人ではないかー!
むろん我らがルパンにも異国の血は入っている。が、フランスは幕府に味方したのだ。ルパンと手を組むのは「フランス人なら信用できる」という近藤らしい単純な理屈が成り立つ。
この場合、メリケン野郎は銭形に近づいてはどうだろうか。宝を近藤の会社に渡したくない外国資本のライバル会社。銭形のルパン逮捕に協力するとみせかけ、実は宝の横取りと新選組壊滅を目論んでいると――そうすれば銭形の出番も作れるし、三つ巴のお宝争奪戦になるのにな。

で、肝心のお宝である"黄金大砲"。これが何とも興ざめだ。
「新選組再起の願いを込めて語り継がれたこの黄金大砲」と沖田は語っているが...剣客集団に伝わる宝がなぜ"大砲"? 意味がわからない(by勇@!)。新選組のシンボルとして全然ピンと来ないので、彼らの嬉し泣きにもポカンとするだけだ。黄金も大砲も新選組にふさわしくない。
では何がふさわしい宝かと考えると、池田屋で使った勇さんの虎徹とか、将軍家からの拝領物か。しかし世間的な価値が伴うまい。となればいっそ徳川埋蔵金ではどうだろう。新選組に伝わる宝としては無理があるので、破産寸前の親会社・徳川財閥から危険な引き上げを頼まれたなどの背景が必要になるが、むしろその方が新選組らしい。

と、あれこれ文句を垂れたが、別に新選組が茶化されることが嫌なのではない。センスさえ良ければギャグ路線でも一向に構わない。むしろ好みだ(by歳@!)
沖田が操る巨大タコ。疑問やバカバカしさやセンス云々は置いといて、これに驚いたルパンが逃げ回るシーンは好きだ。あろうことか不二子を置き去りにする狼狽ぶりや、次元の名を呼びつつ逃げるさまが可笑しい。なので、どうせならこの直前が近藤との対決シーンだったらと思う。それまで表向きは威厳を保っていた近藤があわてふためき、是非ルパンと並んで「トシ!トシー!大タコー!」と叫びながら逃げていただき、そして次元と睨み合っていた土方が「どうした近藤さんっ!」とすっ飛んで来ればいい(ゴメン)。どさくさに紛れて「かっちゃん」とか口走ってくれても......ってこれじゃ「!」のパロディだよ(^^;

ラストだが、これはシュールというのか何というのか...別の意味でもの悲しい。
シリアス路線で行くなら新選組を題材にする以上ハッピーエンドにはなりにくい。けれどルパンたちの目の前で全滅されても気が滅入るので、好みとしては"滅びの予感"辺りに留めてほしいかな。勝ち目の薄い戦いへ赴く新選組と、それと理解して手を引くルパンってのも粋で切ないように感じるが、どうだろうか。

そうそう。お宝を積んだ船について一言。
何度聴いても私の耳には「バンリュウマル」と聞こえるのだが、新ルのムック本には「万臨丸」と書いてある。どちらにせよモデルは幕府方の軍艦「蟠竜丸(バンリュウマル)」だろう。
このチョイスは嬉しい。蟠竜は箱館総攻撃において唯一活躍した箱館軍の軍艦だ。もっとも実在した蟠竜は戦後に修理され、30年近くも現役で頑張ったらしいから、宝と共に沈められた船とは別物になるけれど。

以上、辛口でお送りした「ルパン対新選組」。しかしルパンファンとしては擁護したい点もある。
不二子が天才と評した通り、頭が良く抜け目のないルパンが見られるところだ。ルパンは必ず黄金大砲を引き上げる――と近藤が呟くところから、持ち去られた大砲の在処を発信器によって突き止めるまでは特に好きな部分である。海底を廻る船を引き上げる設定も面白い。
それだけに、惜しい。
せっかく大好きなルパンと新選組が競演した作品だというのになぁ...。

コメント(4)

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僕は新撰組に格別の思い入れがあるわけじゃないので、その意味では素通り出来ちゃうんですが、それでも、折角の堅実な作画が活かされず、如何にもな『おざなりストーリー』に堕しちゃったのが勿体無いなぁと思う回です。

沖田と近藤の描き方、何故土方は登場しないのか…については、身も蓋も無い読みをすれば恐らく、そもそもこの話は五右ェ門と沖田総司の対決を描きたかった『だけ』ってとこに尽きるんだろうと思います。だから近藤は単なるボスキャラで片付けられてしまっている、と。土方のポジションは無い、と。で、その沖田総司にしても美青年剣士というイメージだけが重要で、キャラクターをきちんと描く気は最初から無かったんだろうと思います。
しかしその『対決』も、単にミーハー的な気分で顔合わせ興行しただけに過ぎず、実際のところは対決らしい対決を何もやってないんですよね。この回の主眼は『美形キャラ対決』と『大掛かりな引き揚げ作戦』の二本立てになってますが、一本に絞って念入りにやった方が良かったのに、と思うところです。何か新ルの駄目な回ってのは、こうやって、あれもこれもと手を出して、食い散らかした揚句に内容が空疎ってのがパターンのような…。

「万臨丸」は明らかなミスでしょう。ムック類ってこの手のミスが多いですね。

konさんっ、ついさっき「池田屋」見てきました!もうーお話したいことだらけで、頭の中が大変なことになってるんですが(笑)それはさておき。

konさんのご指摘や提案が、尤もな上とても面白くて(「ルパン」・新選組どちらのファンにとっても面白い!)、新ルスタッフに作り直して欲しくなっちゃうほどでした^^
相棒同士の牽制、見てみたかったですねぇ。
二股かけた不二子が、ルパンの天才ぶりに惚れ直すっていうのもステキv(あの回のルパンを「天才だわ!」という不二子は良いですよねv)
それに五右ェ門対沖田の剣士対決をするならば、見応えのある場面を作って欲しかったです。
私も大ダコシーンはいろいろ美味しくて好きなんですが(笑)、負けそうだからってあんなモノ呼び寄せる沖田ってどーなのよ?と思ったり。
有名人の子孫として出てきた割に、たいした魅力もないキャラになっていて、勿体無いですね。

「万臨丸」はやっぱりミスですかー。
「蟠竜丸に書き直そうかしら。

>池本さん
ははあ、この回作画は堅実でしたか。そういえば乱れてなかったかな?…とまぁ、確かに思い入れがないとこの程度の認識ですよね(笑)

> 五右ェ門と沖田総司の対決を描きたかった『だけ』
なるほどー…って、納得しませんよっ。
だって対決っていえる対決してないじゃん。やたら意識してた風で勿体ぶった割に、あっさり刀折られて肩すかしですよ。そんならしっかり『対決』を描いてくれー!

> 顔合わせ興行
あー、大晦日のK1みたいなもんか。だったらわかりますわ。
とりあえず面白そうだから組ませとけ、と。で、ちくしょー金返せ!みたいな(^^;

> 『美形キャラ対決』と『大掛かりな引き揚げ作戦』の二本立て
> 一本に絞って念入りにやった方が良かったのに
私は、この二本立てでも構わなかったですね。結局はタコを出したことが敗因じゃないかと思いますよ。あれで沖田の印象が剣士じゃなくて動物使いになっちゃったもの。実際、剣を遣うシーンより時間も食ってた気がするし。
彼らはあくまで剣で勝負してほしいです。でなきゃ看板に偽りありでしょう。美形なだけなら沖田じゃなくっていいよ(絡み酒モード)

> 「万臨丸」は明らかなミスでしょう。
やっぱミスですかね。個人的には「蟠竜丸」のほうが嬉しいですが。

それにしても、ホント勿体ないんだよなあ…(悔)

>みゆさん
「池田屋」よかったでしょー! 「組!」はもうホントに興奮しますよね。これから先はますます怒濤の展開が続きますよ。
あー早くご一緒に語りたいっ。…とまぁそれはさておき。

まったくねえ、作り直して欲しいくらいですよね。私の戯言は「言うは易し」ってヤツですが、傑作にはならなくてもせめてどちらのファンにも楽しめるようにつくって欲しかったです。
相棒対決も見てみたいですよねえ。ま、これはアニメより小説向きの題材かもしれないけど、せっかく3対3になるのだから、やっぱり土方にも登場して欲しかったな~。
そうそう、不二子も今回「利」以上にルパンへの気持ちが傾いてるみたいだから(割と珍しい?)、その点ももっと活用されてたらなぁと思うんです。
五右衛門vs沖田は、やっぱり見応えのある対決シーンが見たかったですよね! せっかく五右衛門に対抗できる剣士を登場させたのに、剣で魅せてくれなくてどーすんだっ。

> 負けそうだからってあんなモノ呼び寄せる沖田ってどーなのよ?
まったくですよ。なんでそーなるの?って感じです。だったら(剣士としての)沖田でなくていいじゃんって思っちゃう。
キャラとしては、必ずしも「沖田」のイメージでなくてもよかったんです。魅力的なキャラでさえあってくれたら、別にイメージが違っても許せたと思う。でも全くつまんないキャラになってますもんね。それが悔しいっすわ。

ホントはみゆさんのレビューで突っ込んで欲しかったんですけどね~。今なら前と同じには書けないでしょ。つくづく残念です。なんで71話を残しておいてくれなかったのぉ~?(またも絡み酒モード^^;)
そのうち日記でもいいから突っ込んでくださいましv←図々しい

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